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遺留分に関するメモ その2

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遺留分の計算 (メモその2)

 前回(遺留分に関するメモ その1)では、遺留分について総論的なものについて記載しましたので、その2では各論的なものについて少し書いてみたいと思います。
 なお、遺留分減殺請求権の実際の行使方法(調停・訴訟)については、その3で説明させて戴く予定です。

(1) 遺留分の事前放棄
 遺留分は相続開始前に放棄することができます(民法1413条)が、家庭裁判所の許可が必要とされています。これに対し、相続の放棄の場合は、許可を求める必要はなく申述という家庭裁判所への届出で済みます(民法938条)。
 これは遺留分の放棄が強要されるおそれがあることから裁判所の許可にかからしめたとされています。戦後に民法が改正されて家督相続が廃止されましたが、まだまだ家長であった父親の発言力が強く、長男に家を継がせるために次男坊以下や娘に遺留分の放棄を強要することを懸念したのでしょうか。いずれにしろ、遺留分放棄は民法が相続の原則とした諸子均等相続制(見慣れない表現ですが文字からその意味は分かりますね)に反するものともなりますので、そのようなことがないように家庭裁判所の判断を必要とさせたということです。
 家庭裁判所が申立に対して許可の審判をするには、放棄が申立人の真意に基づくものであること、放棄に客観的な合理性があること(相応の財産の生前贈与を受けている等)が必要であるとされています。しかしながら、実際の運用では、申立の8割から9割は許可されており、私が代理人として申し立てた案件でも、書面判断のみで許可の審判が出されました。なので、実態は形式的な審査のみで許可の判断がなされているものと、個人的には考えています。
 また、この許可の審判を取り消すこともその後の事情によっては認められています。遺留分放棄の状態を存続させておくことが不合理・不相当となった場合に限定されていますが、審判の取消を申し立てることにより放棄がなかったことにできます。

(2) 遺留分と葬儀費用
 葬儀費用を相続財産から支出する例は珍しくありません。このことからすれば、遺留分の金額を算定する際に、葬儀費用を控除しても良いのではないかという疑問が生じますね。そこで、この点を検討してみますが、まずそもそも葬儀費用は誰が負担するものでしょうか。
 葬儀の主催者が負担すべきとするもの(裁判例の立場とされています。)、相続財産から支出すべきとするもの、相続人が共同して負担すべきとするもの、等の考え方があります。後2者の考え方からすれば、葬儀費用を遺留分の金額算定に当たり控除する余地もありそうですが、控除できないと考えられています。
 条文上の根拠としては、民法885条が「相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。(中略)前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によって得た財産をもって支弁することを要しない。」と定めていることがあげられます。
 従いまして、遺留分権利者としては、葬儀費用がいくらかかった知らないけれど、それによって自分の遺留分の金額に影響はないはずだ、という主張ができることになります。

(3) 個々の財産の評価について
 遺留分の算定方法は、相続開始時の相続財産の価値を基準としますが、その評価方法についてどう考えるべきでしょうか。
 基本的には時価で評価することになります。不動産や動産は取引価格となります。但し、実務では鑑定費用をかけることを避けて、路線価(あるいは1.2倍としたもの)を用いることもあります。
 ところで、相続財産である不動産に担保権が設定されていた場合はどう考えるべきでしょうか。被担保債権が被相続人の債務であれば、遺留分の計算はプラス財産から負債を控除して行うということからすれば、担保の有無は遺留分の計算には影響しません。しかし、被担保債権が被相続人の債務でなく、相続人であったり第三者であった場合は、問題となります。万一、被担保債権の弁済が滞ると不動産を失うおそれもあります。裁判例では、不動産の取引価格から被担保債務を控除した額として評価するされています(大判昭15.20.26)。

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