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遺留分に関するメモ その1

遺留分の計算 (メモその1)

 遺留分は、相続財産のうち相続人が相続できる最低限の割合を意味します。民法では、遺留分についての定めは、一番最後におかれており、民法第1028条から第1044までの17つの条文しかありませんが、奥が深いものと考えています。
 以下は、私の備忘録に一般向けのご説明を若干加えたものです。なので、遺留分について網羅的に説明するものではありません。また、一部には私見も含まれております。

(1) 遺留分の割合
 父母等の直系尊属のみが相続人である場合は、相続財産の1/3×自らの相続割合
 それ以外(一般の場合)相続財産の1/2×自らの相続割合 (1028条)
 なお、兄弟姉妹には遺留分は認められていません。子供のいない方で、疎遠となった兄弟姉妹に相続されることを望まない場合は、遺言書を作成しましょう。兄弟姉妹は遺言書にはかないません。

(2) 遺留分の行使方法
 遺留分を侵害する遺贈や贈与に対して減殺請求をします(1031条)。請求できるのは「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から」から1年、知らなくても相続開始から10年経過すると請求ができなくなります(1042条)。
 注意すべきは、相続の開始及び贈与又は遺贈があったことを知ったことのみでなく、それらが遺留分を侵害しており減殺の対象となることを知ったときと、解されている点です。このため、遺留分権利者の主観により影響を受けることがあります。

(3) 遺留分の算定方法
 まず、基礎となる相続財産の額を決める必要がありますが、相続開始前に贈与したものや遺贈したものも含めてプラスの財産を計算して、そこから債務を控除して算出します(1029条)。
 贈与については相続開始前1年間まで加えることができるとされていますが(1030条)、相続人に対する贈与は、このような制限はないと解されています(903条)。つまり、相続人は、昔の贈与まで遺留分の計算に入れることになります。
 ここで考察。相続人が相続の放棄をすると「初めから相続人とならなかったものとみなす。 」(939条)こととなっています。なので遺留分を侵害するような贈与を受けた相続人は、その贈与から1年経過していた場合は、相続を放棄すると相続人でなくなるから遺留分減殺請求を受けることがなくなる、ということになりそうです。
 但し、相続人でなくとも「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたとき」は、1年前の日より前にしたものについても対象となります。それでもこの主観面である「遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした」との立証は難しい場合もあり得ると思われますので、遺留分に対抗する方法として相続放棄を検討する余地は十分あると思います。

(4) 特別受益について
 遺留分と特別受益の関係についてですが、まずは持戻義務を免除する意思表示がある場合に、特別受益分を無条件に遺留分算定の基礎にする財産に加えなければならないかという点です。
 準用される903条3項は「その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。」と定めています。この条項の解釈について、特別受益を当然に遺留分算定の基礎にする財産に加えるという説(算入説)と、算入するのは相続開始前1年間に行われたとき及び当事者双方に侵害の意思があるときのみ、算入されるとする説(不算入説)が分かれています。
 この点について、最高裁判例は見当たりませんが、大阪高裁平成11年6月8日判決は、算入説に立つことを明確にしています。
 また、算入説に立った上で、特別受益の価額を遺留分算定の基礎財産に算入するにとどまるのか、さらに無制限に減殺の対象となるのかという点についても争いがありましたが、この点については、当然に減殺の対象となるという判断が最高裁で示されております(平成10年3月24日判決)。
 この(4)のについては、私の論点の備忘録としての色彩が強いので、一般の方は次のようにご理解戴ければ足りると考えます。
 例として、被相続人が特定の相続人に行った生前贈与(特別受益)について、「この贈与を覆すことはまかりならん」と遺言書に明記されていた場合、それが遺留分を侵害する場合は、他の相続人はその贈与を遺留分を侵害するものとして、相続財産に戻すことを求めることは可能だけれども、遺留分を侵害しない場合は、遺言書の記載通り、まかりならん、という結論になります。

(5) 寄与分について
 寄与分の規定は、昭和55年の民法の改正の際に新設されましたが、遺留分との関係については何らの規定も設けられませんでした。寄与分は、遺留分算定の基礎財産から控除されませんので、遺留分の計算には影響を与えることはなく、また遺産分割手続内で寄与分は決定されるものですから、両者の抵触を想定して規定を設けるまでもない、と判断したのかもしれません。
 しかし、実際の相続事件では問題が生じることがあります。一例をあげますと、農家の跡取りとして家業の農業に従事した長男に7割の寄与分を認め、他の相続人の遺留分を侵害する結果となった審判を、東京高裁の判決(平成3年12月24日)は、要旨「寄与分の認定に上限はないけれど、他の相続人の遺留分を考慮しなくても良いということにはならない」として、原審判を取り消しています。
 但し、遺留分の主張の当否にあたって、寄与分があることをもって対抗することはできないと考えて良いでしょうから、遺留分の争いの範囲では寄与分はひとまず置いておく、という対応で良いと考えます。

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