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保証人の消滅時効の援用

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消滅時効の援用と保証人

 債務整理の相談を担当していると、消滅時効の援用による解決を試みるケースに時々出会います。
 消費者金融から借入をしていたけれど、失業してしまって借金の返済どころではなくなってしまったので、住民票を置いたままにして転居したので(世間的には夜逃げと言われるものかもしれませんね。)、結果、返済をすることなく長期間が経過したようなケースです。
 この場合、消滅時効の完成しているとして時効の援用により解決する方法が考えられます。しかしながら、そのような方が相談に来る切っ掛けは、生活保護を受けるために住民票を移したところ請求が来たとか、請求を受けてからということがほとんどです。中には、直接集金に来られたので千円だけ払ってしまった、という方もいました。
 債務の弁済は、一般に「債務の承認」にあたることから時効の中断事由となります。また、消滅時効が完成していても「債務の承認」があった後は、消滅時効を援用することは信義則上許されないと解されています(最高裁昭和41年4月20日)。但し信義則上の制限なので、弁済をしてしまったときの状況によっては、消滅時効を援用しても信義則に反しないことも主張することも可能な場合もあります。
 相談の回答としては「どんな状況で弁済をしましたか?」の質問の対する答えにより変わるところです。

 ところで、保証人の弁済の場合は別のアプローチがあります。保証人が負っている債務は保証契約によって発生した保証債務となります。保証人が弁済するということは、保証債務の弁済になります。この場合、保証債務については「債務の承認」に当たりますが、この弁済によって中断されるのは、あくまで保証債務の消滅時効となります(民法458条・440条)。
 そして、保証の対象となっている主たる債務は、保証債務とは別個のものなので、保証債務の時効が中断されても主たる債務の時効が中断されることはありません。このため保証人の弁済後に主たる債務について消滅時効が完成すれば、保証人は主たる債務の消滅時効を援用することにより、保証債務の弁済を免れることができます。これは保証債務の附従性の効果となります。更に、保証人が弁済した時点で既に主債務の時効完成後が完成していた場合でも、保証人は主債務の時効消滅を援用することができると解されています(最判平成7年9月8日)。
 なお、主債務について破産手続が行われた場合、免責決定により主債務に対して訴えを提起して回収をすることができなくなりますので、もはや消滅時効の進行を観念することができないとされています(最判平成11年11月9日)。このため、保証人は、主債務の時効を援用するということはできなくなります。これは免責決定の効力が主債務のみに及び保証債務に及ばないためのものです。

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