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借地非訟手続について

借地非訟手続について

 「借地上の建物が老朽化して危険なので改築したい」、「木造平屋建ての建物を軽量鉄骨造りの2世帯住宅やアパートにしたい」、あるいは「建物を借地権付で売却したい」、と要望があるけれど、「地主さんが許可してくれない」、「許可してくれてもその条件が厳しすぎて合意できない」、という場合、借地非訟手続を利用して解決することができます。
 ところで、借地非訟手続って、一般には、聞き慣れないものですから「一体どんな手続なの?」と疑問が生じるかもしれません。
 借地非訟手続とは、土地の賃貸借契約において、借地条件の変更等の問題が生じたときに、これらに関する紛争を予防して、将来に向って契約当事者の利害得失を調整し、裁判所が賃貸人の承諾に代わる許可を与える等の裁判手続です、と言っても少々分かり難いですかね。簡単に言いますと、地主さんの承諾の代わりに裁判所の承諾を求める裁判手続、ということになります。

 借地非訟手続は、借地借家法の第17条から第21条に規定されていますが、この部分は、借地法の適用があった時期(平成4年7月31日まで)に設定された旧借地権についても一部(18条)を除き適用されます。
 借地法では、条件変更としては、文言上、変更の対象は、非堅固の建物を堅固の建物に変更することに限定されてましたが、借地借家法では、建物の種類、構造、規模や用途の変更も対象としております。このため、借地法の頃に設定されたいわゆる旧借地権についても、これらの変更についても申立ができることになります。
 ここで、具体的にどのようなケースが借地非訟手続の対象となるかですが、裁判所のホームページの分類を引用しますと、以下の通りとなります。

 (1) 建物の構造等に関する借地条件変更申立事件(条件変更事件)
 (2) 増改築許可申立事件 (増改築事件)
 (3) 賃借権の譲渡または転貸許可申立事件(譲渡事件)
 (4) 競売または公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件(公競売事件)
 (5) 借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件(介入権事件)

 以上の分類となりますか、条文を参照しながらお読み方は、借地借家法18条の事件、上記の括弧の見出しに従えば(更新後の建物再築事件)が、なぜ分類として無いかと疑問に思われるかもしれませんね。しかし、18条は、旧借地権には適用がないため、新借地権の更新後の再築に限定されます。新借地権は、平成4年8月1日以降のものですから、更新後の再築が問題となるのは、平成34年8月1日以降となります。このため、まだ裁判所では扱っていないため、分類に記載されていない、という理由になります。

 次に、借地非訟手続の手順や進行ですが概略は以下の通りです。

 まず、どこの裁判所に申し立てれば良いか、いわゆる管轄の問題ですが、これは借地の所在地域を管轄する地方裁判所となります(借地借家法41条本文)。但し、当事者の合意がある場合は,簡易裁判所に申し立てることができます(同条但書)。
 東京に借地があるときは、23区内と八丈島などの島部は、東京地方裁判所(民事第22部)に申し立てますが、それ以外の多摩地方等の場合は、立川支部に申し立てることになります。
 申立の方法としては、申立書と必要書類を提出して行うことになります。裁判所のホームページを参照するなどすればご自身で申し立てをすることも可能と思います。但し、ご不安がある場合は、大切な財産である借地権の問題ですから、私をはじめとする弁護士にご依頼下さい(宣伝です)。

 申立が受理されますと、事件の審理手続が始まります。一般の事件では、口頭弁論の期日が指定されますが、非訟事件なので審問の期日が指定されます。口頭弁論と審問は異なる手続ですが、ご自身で行う場合は特に意識される必要はないでしょう。
 第1回審問期日は、1か月~1か月半後の日が指定されることが多く、その後は1ヶ月程度の間隔をおいて期日を繰り返すことになります。

 この過程において、和解の斡旋が行われることが多いです。借地契約は長期に渡るものですから、借地人の方と地主さんが話し合いで解決した方が、裁判での解決よりは望ましいためです。しかし、和解ができないときは、裁判所が決定を出して解決することになります。

 決定においては、申立を認める場合、借地人に金銭の支払いを命じることになります。条件変更にしろ、増改築にしろ、それらが認められることは地主さんの負担が増える(土地が戻ってくることが遠のく)ことになりますので、相応の代償を支払うべきだからです。
 但し、裁判所は法律のプロですが、不動産の評価(価格)については、必ずしもそうは言えません。このため、具体的な金銭の金額を決めるあたって、鑑定委員会の意見を聞くことになります。
 で、この鑑定委員会ですが、通常、弁護士と不動産鑑定士、それと建築士または有識者の3名の鑑定委員から構成されます。特筆すべきは、通常の裁判の場合、鑑定費用は当事者の方が負担するのですが、借地非訟事件の場合、鑑定委員に要する費用は、国が負担します。当事者の方は費用負担がありません。有り難いことです。
 鑑定委員会は、現地を調査した上で、「意見書」というものを作成し裁判所に提出します(私が経験した例では現地調査は実にあっさりしたものでした)。当事者の方は、この「意見書」に対して、書面で意見を述べることができます。裁判所は、「意見書」とそれに対する当事者の方の意見を参照して、決定を出します。

 この決定に対しては、不服申立(抗告)ができます。決定に不服があるときは、決定書を受け取ってから2週間以内に不服申立(即時抗告)をすることができます。
 決定が確定しますと、地主さんの承諾があったのと同じ効果が生じますので、命じられた金額を地主さんにお支払いすれば、無事着工することできます。

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